「高菜漬」は九州の特産漬物として知られています。佐賀県にも、有明海沿岸部で古来より生息していた「赤高菜」という高菜の品種がありました。これに、中国より渡来した「大芥菜(タア・ジェツァイ)」が交配され、「佐賀の紫高菜」「三池高菜」が出来たと伝えられています。
佐賀県には、背振・天山・多良という三つの山系があり、その中の天山山系に「作礼山」という修剣道の霊山があります。その山のふもとに位置する相知(おうち)町は、たいへん水が綺麗で、町内にある「見帰りの滝」は、あじさいの咲く頃には多くの観光客が詰めかけます。
その山嶺・相知町の山あいにある楠村と言う山村に、古くから栽培されていた「相知高菜」、またの名前を「楠高菜」がありました。昭和40年代までは相知町(現在は唐津市)で盛んに栽培されていましたが、三池高菜など他の品種に比べると形状がやや小型で肉質も柔らかいため、反当たりの収穫量が少なく、漬物加工業者も歩留まり等の問題から、次第に栽培されなくなっていきました。最近では「まぼろしの高菜」とまで言われていました。
佐賀県漬物工業協同組合の前田節明理事長は、全日本漬物協同組合連合会の委員会組織である「地域特産品委員会」の活動を機に、その「まぼろしの高菜」の調査を行政・農協関係、種子業者などに依頼していましたが、種子はなかなか見つかりませんでした。
しかし、平成19年6月、相知町で漬物加工業を営む広瀬商店・広瀬忠伸社長の高菜契約農家の納屋から、少量の種子が偶然見つかり、それを播種して翌20年5月に種子の採集が行われました。
その報告を受けた前田理事長はさっそく、同年10月上旬より自社・前田食品工業の試験農場と、JAからつ管内の相知地区楠村および七山地区の圃場で、試験栽培を開始。翌年(21年)4月初旬に収穫して、漬け込みを行いました。
秋口までじっくり熟成させて漬け上がり具合を調べた結果、味・色上がり・芳香など、食感は従来の高菜漬より柔らかで、たいへん美味しく仕上がりました。
相知町は、複数の川が合流する『合う地』が名前の由来とされており、土地はたいへん肥えています。相知町を含む唐津管内に限っても、かなりの量の収穫が見込めるため、佐賀県漬物組合では平成20年12月に、組合事業として「相知高菜」の復活に取り組むことを決定しました。
21年3月には「相知高菜特産品推進研究会」が発足。佐賀県の漬物組合員・佐賀県食品産業協議会員・佐賀県中央会・生産者・JAからつ農協関係・相知町観光課・旅館組合・その他、多くの人々が「相知高菜」の復活に協力しています。
佐賀発の『地域ブランドを全国へ』―。大きなロマンと夢を乗せた「相知高菜プロジェクト」が、現在進行しています。
資料提供:株式会社 食料新聞社 |